MercedesレポートVol.7
~あのメルセデスに乗ってみた~
メルセデス・ベンツE 220 BlueTEC
どんなクルマ
ディーゼル後進国ニッポン
21世紀を目前に東京都で始まったディーゼル規制運動。
我が国ニッポンも米国とともにすっかりディーゼル後進国となってしまっていた。
その間、かの国欧州では日本中を席巻したハイブリッドエンジンの向こうを張るように、ディーゼルエンジンの開発競争が勃発していた。
各国各社がしのぎを削ってきたこのディーゼルエンジン。
なかでもひときわ目立っていたのがメルセデス・ベンツのクリーンディーゼル技術だった。
2006年に我が国ニッポンにも初導入されたメルセデス・ベンツE320CDI(当時)。
それからはや9年。
今月にはSクラスにおいてディーゼルハイブリッドエンジンなるものが登場した。
なんとこのクルマ、鹿児島から東京までの1,540㎞の道のりを無給油走破してしまったらしい。
そんな話題に影響してしまい、今回の試乗車にはそのディーゼルハイブリッドのベースエンジン、2.2リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンをまとうメルセデス・ベンツE 220 BlueTECに白羽の矢を立ててみた。
メルセデス・ベンツ×クリーンディーゼルが産み出すモノ
今モデルがデビューして約6年。
現在のメルセデス・ベンツEクラスにおけるベースグレードがこのE 220 BlueTECなのだ。
599万円からのプライスタグは国産Eセグメント(トヨタクラウン/レクサスGS/日産フーガ/ホンダレジェンドなど)に乗るドライバーには非常に興味深いかもしれない。
今回はいつもと趣を変えて日常使用にフォーカス、国産同クラス車との比較の観点からレポーティングしてみたい。
果たしてこのクルマからはどんなメルセデス・ベンツの流儀を見つけることができるのか?
それでは2.2リッター、177馬力のディーゼルエンジンを食してみよう。
首都高速編
想像以上にコンパクトなボディ
対面したこのメルセデス・ベンツE 220 BlueTECは、見慣れたCクラスが大型化したせいか想像以上にコンパクトに見えた。
このクルマ、2013年のマイナーチェンジでフロントフェイスを近年のメルセデスフェイスへチェンジ、SクラスやCクラス同様のLEDのアイラインをあしらい、非常に凝ったヘッドライトの造形を有している。
大きさは全長4,880mm、全幅1,855mm、全高1,455mm。
いわゆる国産Eセグメントのトヨタクラウンや日産フーガと同等の大きさのボディと考えれば想像し易い。
車内を見渡せば、そこはいつものメルセデスワールドが広がっている。
あいかわらず国産車に比べて分厚いドアとがっちりとしたサイドシルがしっかりと乗員を守る。
また腰を落としたシートは毎度のごとく少しだけ長い座面長が心地良い。
手の触れる部分のほとんどはソフトパッドに覆われ、乗る者への高品質感を怠っていない。
ステアリングはメルセデス特有のシルバー塗装も手抜きがなく、少し太めのグリップとそのしっとりとした感触にいつものメルセデス・ベンツの安心感を覚える。
観音開きのコンソールボックスはしっかりと起毛仕上げを施し、何気なく備わっている。またUSB接続がさりげなくうれしい。
完成された乗り味
いつものごとく走らせてみよう。
車内にいる限り、このクルマがディーゼルエンジンであることを認識できない。
すべてのノイズが上手く遮音されており、ステアリングやシートから伝わる振動もまったくと言っていいほど感じることはなかった。
早速、霞ヶ関インターから首都高速へ合流する。
何かに押されたようにこの推進力は新鮮だ。
狭く短い霞ヶ関インターの合流レーンでも何ら不都合はない。
その不思議な感覚はなんとも形容し難いもの。
スポーツカーのような鋭い加速でもなく、大排気量のようなけたたましい加速でもない。
階段を登る時に後ろから2~3人に後押ししてもらっているようなトルク感というか...
そんな表現がぴったりくるほど、この楽チンで気持ちの良い加速感。
2.2リッター、177PSでトルクが40.8kg・m、ガソリンエンジンから考えるとなんともアンバランスなこの数値が意味することを、ドライバーは乗車早々に気づかせてもらえるだろう。
環状線から5号線へ合流、世界でも有数の事故発生率というありがたくない称号を持つこの首都高速5号線、大きなカーブが次々と続いていく。
そういえば、以前乗っていた国産の同クラスセダンでは、きついアンダーステアと柔らかいサスペンションに随分と苦労させられていたものだが...
それに比べてこのクルマは素晴らしい。
回頭性良く簡単にこの大きなカーブをクリアしていくのだ。
またアクセルを軽くコントロールするだけで速度をキープできることも相まって、ストレスフリーで楽しく運転することができる。
これは今までどうも運転があまり好きでなかったというドライバーの方にも、 ぜひともこの完成されたメルセデス・ベンツの乗り味を味わってもらいたものである。
都心渋滞編
覆された先入観
このクルマの真髄は何も高速道路に限るものではない。
毎日の都心の渋滞路でもその素性の良さは十分に発揮されていた。
今回の総走行距離700km超においての大部分を占めていたのが都心の日常使用だった。
真夏の都心は渋滞の影響もあってか摂氏40℃近くに達するほどクルマには劣悪な環境となってしまう。
まず驚いたことは、ディーゼルはうるさいという先入観が覆されたことだ。
運転して走行している限り、このクルマがディーゼルエンジンであるということを意識することはない。
逆に回転数で馬力を上げてスピードを上げていく通常のガソリン車とは異なり、立ち上がりからまるで後ろから持っていかれるごとくのトルク感は、良い意味でディーゼルを感じさせてくれて真新しい。
といっても乗り心地は決して荒々しいものではなく、むしろしっとりとした軽快感という矛盾した表現が正しい。
またアイドリングストップの行儀良さも、この車の乗り心地の上質感に一役買っているのだろう。
その上、燃費性能がこれまた素晴らしい。
高速道路だけの実測燃費はなんと約18km/lに達していた。
当日の経由価格109円(レギュラーガソリン122円)でガソリン換算すると、なんと20km/lに達し、プリウスやフィットハイブリッドと同等の燃費をこの車格で実現してしまうのだ。
総論
世界最高峰の中庸性
いままで当たり前のようにガソリン車を選び、時代の変遷とともにハイブリッドへ流れてきた現代のアクティブなエリートやスマートなシニアの方々にとって、このクルマの存在は朗報に違いない。
5名がストレスなく乗車でき、トランクにはゴルフバッグが3つ収まる。
そして高速巡航ではハイブリッドをはるかに凌ぐ由緒正しいオーセンティックなセダンボディ。
誰にも受け入れられるこの中庸性は、もはやメルセデス・ベンツの独断の領域かもしれない。
クルマとしての素性や歴史的背景はもちろん、エンジンやサスペンションといった各部門のしつけ、これぞ現代のクルマ社会における世界最高峰の中庸性とも言える。
この世界最高峰の中庸性は今後、老若男女を問わず広く誰かの良き相棒として活躍することだろう。
今後も街中やゴルフ場など、ふとした場面でこの良き相棒が活躍する場面に出逢えることを願いたい。
ふとそんなことを想いつつ、今夜も乾杯...
測ってみると
- 全長×全幅×全高 4,880mm×1,855mm×1,455mm
- ホイールベース 2,875mm
- 車重 1,830kg
- 駆動方式 後輪駆動
- エンジン 2.2リッターDOHC直列4気筒ターボディーゼル
- トランスミッション 7段A/T
- タイヤ FRともに245/45R17
- 燃費 18.6km/l(JC08モード走行)
- 価格599万円※メーカー希望小売価格(税込み)
- 試乗車の年式 2015年式
- 試乗開始時の走行距離2,012km
- 走行距離 729km
- 消費ガソリン65.9l
- 試乗形態:市街地70%/高速30%
- 実燃費 11.1km/l(軽油)