いびきは無呼吸の前兆状態、要注意 睡眠時無呼吸症候群の治療法紹介 (2016年6月14日午後2時00分)

あなたは夜眠っている間に「いびき」をかいてはいませんか?もしくは家族をはじめ身近な人のいびきが気になることはありませんか?

いびきとは眠っている間にノドが狭くなって、呼吸をするたびにノドが振動して起こる現象です。ノドは普段周りの筋肉で支えられていますが、眠っている間にはこの筋肉があまり働かなくなってゆるむため、特に息を吸うときに狭くなります。そして、仰向けで寝ると、あごや舌がだらりと下方に落ち込むことも、いびきの原因となっています。

いびきはうるさくて他人に迷惑をかけたり、恥ずかしかったりというだけでなく、眠っている間に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」につながって生活の質を落としてしまったり、場合によっては命に関わるほど体に悪影響を及ぼしてしまったりするので、注意が必要です。

筆者は歯科医師として歯や口周りの情報を「ムシバラボ」というサイトで発信していますが、なぜ、筆者の立場からいびきや睡眠時無呼吸症候群の危険性を訴えるかといえば、歯並びの悪さはこれらの原因のひとつに数えられ、それを防ぐためのマウスピース作製などで治療に携わる機会があるからです。

■どんな人がいびきをかきやすい?~いびきの原因~

いびきは誰にでも起こりうるもので、特に疲れていたり、お酒を飲んでいたりすると出やすくなります。しかし、いびきが日常化している人には次のような傾向があります。

・あごが小さい、または引っ込んでいる
・太っている(ノドや舌に脂肪がつく)
・鼻が詰まっていて口呼吸の人
・歯並びが悪い
・枕が高すぎる、低すぎる、など合っていない人
・扁桃肥大、アデノイド肥大の人

そして睡眠時無呼吸症候群の人には多くの場合、いびきが見られます。いびきは無呼吸の前兆の状態であり、いびきがひどくなると無呼吸状態が起こります。もしも、睡眠中に頻繁に呼吸が止まってしまい(1時間に5回以上)、10秒以上無呼吸の状態が続く場合はこの病気の可能性があります。

無呼吸が起こっている間は睡眠が浅くなり、短時間目が覚めた状態が起こります。そのため、途切れ途切れの質の悪い睡眠となってしまい、いくら眠っても「疲れが取れない」「眠い」「集中力がない」「ボーッとする」「頭痛がする」などの症状が現れます。

車を運転する人では、居眠り運転で交通事故を起こす危険性が高くなることがわかっています。この病気は自覚症状があまり出ないため、自分では気づきにくいのが特徴です。多くの場合は家族など身近な人に指摘されて発覚しますが、一人暮らしの場合などは発見が遅れることがよくあります。

■恐ろしいのは合併症を引き起こすところ

そして、睡眠時無呼吸症候群は、単に睡眠中に呼吸が止まって眠気が取れない病気なのかというと実はそうではありません。この病気の恐ろしいところは合併症にあります。

体が酸素不足になるため、体のすみずみまで酸素を運ぼうとして、心臓が一生懸命働くことにより、心臓に負担がかかります。その結果、高血圧、心臓病、不整脈、脳血管障害、糖尿病を合併症として引き起こすことがあります。つまり放っておくと命にかかわる場合があるのです。

逆に、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病になると、睡眠時無呼吸症候群を伴いやすいことも明らかになっています。具体的には 睡眠時無呼吸症候群の50~80%に高血圧、高血圧の30~50%は睡眠時無呼吸症候群になっているようです。

睡眠時無呼吸症候群の治療を行うと悪玉コレステロールが下がり動脈硬化が予防でき、血圧を下げられ、糖尿病の改善につながります。睡眠時無呼吸症候群が重度になっている人が、治療をせずに放置すると数年後には40%ほどが死亡するというデータもあります。

睡眠時無呼吸症候群の対処法・治療法としては次のようなものがあります。

■睡眠時無呼吸症候群の対処法・治療法

1.減量する

この病気を発症している人の多くに肥満が見られます。減量して肥満を改善するだけでも治ることがよくあります。

2.睡眠中の姿勢、枕の高さに気をつける

仰向けになるといびきや無呼吸が起こりやすくなります。枕が高すぎても低すぎてもよくありません。いびきが起こる原因によって合う枕の高さも変わってきますので、自分に合った高さの枕を探すことが大切です。また、手をバンザイした状態で寝るといびきをかきやすくなります。

3.鼻づまりを改善する

鼻づまりのある人は耳鼻科で鼻や咽頭に異常がないか診てもらい、異常があれば治療を受けましょう。

4.マウスピースを入れる

歯科でいびき防止のマウスピースを作ってもらうことができます。あごが小さいためにいびきをかいている人が主な対象となります。この場合、呼吸器科、耳鼻咽喉科などの専門の医師と連携しての治療となります。

5.手術をする

扁桃肥大、アデノイド肥大などが原因の場合は手術によって改善が可能です。

6.歯列矯正をする

あごが小さかったり、歯並びが悪かったりするといびきが起こりやすくなるため、お子さんで歯並びに問題がある場合には矯正治療をしたほうが良いでしょう。

7.マスク療法

呼吸科などで行われる方法で、CPAPという装置からチューブを経由し、鼻につけたマスクから出てくる空気によって空気の通り道を広げていびきを防ぐ方法です。保険診療適用で、1カ月5000円くらいでレンタルすることができます。

ちょっと前までは、睡眠時無呼吸症候群は病気だとは考えられていませんでした。いびきをかいていたと思ったら急に呼吸が止まって、しばらくしたらまた大きないびきをかき始める、騒々しくて迷惑な人ぐらいにしか思われていませんでした。ところが、現在は医学的にはっきりした病気であると考えられています。

考えてみれば、長い人生のうち、約3分の1の時間は寝ているのです。最近ようやく睡眠の重要性が指摘されてきましたが、この人生の3分の1の睡眠にしっかりと注意を払うことは、より豊かな人生を送るためにも欠かせません。まずは自分自身や周囲のいびきがどうなっているかに思いを来してみましょう。(小林保行:歯科医師/キーデンタルクリニック院長)

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