MercedesレポートVol.8
~あのメルセデスに乗ってみた~
Mercedes-AMG GL 63
どんなクルマ
THEファーストクラスSUVたる所以
大は小を兼ねる。
古(いにしえ)の時代から「大きさ」は「強さ」の象徴でもあった。
世の中の「THEファーストクラスSUV」とでも言うべきMercedes-AMG GL 63。
2013年4月にフルモデルチェンジを受けたこの大型のSUVは実に5m超の全長に2m近い全幅と全高を誇り、7名分の3列シートを余裕で設えAMGが調律を施した5.5リッターのV8ツインターボエンジンを積む。
先代である初代が2006年に誕生、米国市場を中心に全世界で20万代以上のセールスを記録したこのメルセデス・ベンツGLシリーズの最新かつ最高峰に位置するこのMercedes-AMG GL 63。
SUVのSクラスとも呼ばれて久しいこのMercedes-AMG GL 63は一体どんな「強さ」を見せてくれるのだろうか?
眺めてみると
正統派SUVとしての圧倒的な存在感
いつものごとくスタイリングを見てみよう。
なんともエレガントなエクステリアを持っているのだろう。
このMercedes-AMG GL 63はAMG専用装備となるバンパー、フロントグリル、アンダーガードを装着し、また普段あまり目にすることのできない21インチという巨大な外径を持つタイヤを履いている。
近年、セダンやクーペから派生された流麗なクロスオーバー的なSUVが多くデビューする中、このGLシリーズはまさに王道を行く正統派SUVとしての佇まいを持つ。
この佇まいとこのサイズ感を持ったクルマは、世界広しと言えども他に類を見ない。
またひとつ、メルセデスデザインの奥深さを垣間見れたような気がする。
座ってみると
クルマが目指すべきスペースユーティリティのあり方
いつものメルセデスよりより重厚なドアに、これがSUVであることを感じる。
そして膝を90度ほど曲げて横に滑り込むと、ちょうどそこにこの車のコックピットがある。
車中を覗くと想像していたメルセデスの空間より少しだけシックな様相。
ダッシュボードからレザー、スイッチ一つ一つに光り物が少し控えめ、ウッドパネルもつや消しを採用し、このクルマを一層シックに見せている。
ブレーキを踏んでエンジンボタンをスタートする、そしてハンドルを握りギアをドライブレンジへ入れる。
なんともすべてががっしりとしたこの感触が心強い。
シートは大柄なボディに対して非常にタイトな装いでかつスポーティな造形。
決して窮屈ではなく、むしろこのタイトさに安心感を覚えてくる。
ふと、バックミラーを除けばしっかりとした3列目シートとセダンに比べてずいぶんと遠いバックウィンドウが少し新鮮に映る。
2列目のバックレストが低めにセットされており、ドライバーの後方視界を妨げないよう配慮されているのがうれしい。
後席に座ってみると、これまた2列目はなんとも素晴らしい。
クッションや座面長は当然のこと、フロアから座面までの高さも十分にとってあり、すこぶる心地良い。
背の高いSUVにありがちなフロアから座面までの高さ不足による座りの悪さは微塵も感じられない。
3列目も巷のオケージョナルシートとは程遠く、余裕で大人二人が着座可能。
いつでも電動で格納されるシートとしては信じられないほど、しっかり造りこまれている。
この3列目、格納してみると2,300リッターの広大なスペースにもなるらしい。
お主、なかなかやるな...
乗ってみると
まずはいつものごとく事前に提供された情報を整理してみよう。
・最高出力557ps、最大トルク77.5kgm、5.5リッター V型8気筒DOHCツインターボエンジン搭載
・全長5,145mm、全幅1,980mm、全高1,850mm、車重2,620kg、駆動方式は4WD
・AMG専用のAMG RIDE CONTROLスポーツサスペンションを装備、走行条件に応じて3つのモードから最適なセッティングを選択
・5つの長距離レーダー及び近距離レーダーセンサーとカメラで、天候や時間の変化を踏まえて周辺の車両・障害物との距離や相対速度を測定、万一の時に自動ブレーキを作動する最新の安全システム、レーダーセーフティパッケージ(RSP)も完備
日常のクルマを超える独自の加速感と世界観
それではいざ、乗ってみよう。
少し高い上背から感じるその乗り心地は、格別な安心感を覚えて気持ちが良い。
通常のクルマに対してより大きなボディをより大きなエンジンで駆動していく。
そのさまはまるで水面を巡航するジェットクルーザーのよう。
また、他のAMGシリーズに比べていくぶん柔らかくゆったりしたストロークもその安心感を助長している。
そしてこのゆったりとしたストロークに、極めて高いボディ剛性と数々のハイテクデバイスが大きな安定性を産み出す。
このロングストロークのエアサスペンションは、路面との絶対的な距離もあってか通常のセダンタイプより路面からのノイズや突き上げを柔らかく吸収して包み取っていく。
また長いホイールベースと大きなボディからくる車重は、道路の轍を穏やかにいなし、不快なピッチをきれいに抑え込んでくれる。
しかもさすがAMG。こういった安心感と安定性をもたらしてくれることはもちろん、エンジン音やステアリングから伝わるロードインフォメーション、踏んだ分だけ止まってくれるブレーキのリニアリティなど、ドライバーの五感に伝わる官能性も非常に高レベルなのだ。
工業製品として高い機能性はもちろん、その官能性までも高いレベルで両立しているこのAMGのエンジニアの仕事ぶりにはいつもながら大きな敬服に値するものである。
自分たちは何屋なのか?
近年、隆盛を誇る国産のミニバン。
家族や仲間たちと楽しく過ごせる空間としては、もはや疑う余地はない。
そのミニバンに設えた豪華でかゆいところに手が届くほど装備が充実したキャプテンシート。
それはまるで走る応接間、ビジネスにおいてはさしずめ移動式社長室とも言えるほどであろう。
メディアでのそんな報道を目にしていた矢先に出逢ったこのMercedes-AMG GL 63。
もしかしたら...
我々はクルマの未来にクルマとしての資質を求めることを忘れていたのではないか?
さもするとそれはクルマへのリスペクトを欠いた冒涜とも言えるのではないか?
このクルマはそんな不思議な感情を自分に与えてくれた。
我々日本人が、日本企業がこの失われた20年で忘れてしまったこと。
それは自分たちが何屋なのか?という誇り。
そしてその自分たちが生み出していく製品への強い信念とあくなきこだわり。
このクルマのシートには、造り手があくまでも自分たちはクルマ屋なのだという誇りがある。
この車のシートには、「たかがクルマ、されどクルマ」という強い信念とあくなきこだわりがあるのだ。
これぞきっと今後のビジネスのヒントになるであろう、何よりも人生の糧になるであろう。
そんなうれしさと満足感を与えてくれたこのクルマに、
今夜も乾杯...
測ってみると