MercedesレポートVol.3
~あのメルセデスに乗ってみた~
メルセデス・ベンツC 200 Stationwagon Sports(本革仕様)
どんなクルマ
25年前のメルセデスの原点
初めて触れたメルセデスはかの190Eというクルマだった。
当時の日本車とは随分と趣の異なる独特の形をしていたキーを捻り、重厚でクラシカルなエンジン音を耳にしながら、ジグザグに交差したスタッガード式4速ATをグリグリっとDレンジに入れる。
ずっしりと重いガス式ペダルを踏み込むと、クルマは重めのステアリングフィールを感じながらゆっくりと進み始める。
そう、その190Eこそ今回試乗するこのC 200 Stationwagonのルーツとも言えるのだ。
1982年の190Eの誕生からCクラスへの名称変更を経て数えて5代目。
その時から25年、幾多のモデルチェンジや技術開発を重ねて、セダンからステーションワゴンまで幅を拡げたこのクルマはどのような進化を遂げているのであろうか?
そんなワクワク感を胸にメルセデス本社へと向かった。
眺めてみると
「所有するという悦び」に勝るブランド価値はない
スタイリングを見てみよう。
まず驚いたことは想像以上のたいそうなボリューム感とワゴンとは思えないスタイリッシュなリアエンドの造形。
一見、それは新しいEクラスでは?と見間違えるほど。
そしてリアエンドまでスーッと伸びたサイドウィンドウ、まるで競技用カヌーを逆さにしてガラスエリアにはめ込んだようなシルエットが、このクルマのスタイリッシュさを一層際立たせている。
これが西洋人にとってのステーションワゴンのレーゾンデートル(存在意義)なのか?
ブランド価値を最大化するものの中で、「所有するという悦び」に勝るものはない。
どんなに機能を多様化しても、どんなに使い勝手を良くしたとしても、その根本の美しさを凌駕するブランド価値などはないのだ。
「円高」だけのせいではない
バブル経済崩壊以降の失われた20余年の間、日本の家電メーカーが失っていった世界的競争力。
それは何も「円高」だけのせいではなかったのではないか?
いつしか日本のメーカーたちはバブルへの奢りとバブル崩壊へのエクスキューズから、真の競争に目を背け、安易に商品の機能の多様化を図った(逃げた)。
かつて失った世界的競争力は、それが商品の付加価値を上げることだと信じた報いなのかもしれない。
このC 200 Stationwagon Sportsを眺めていると、ふとそんなことが思い浮かんできた。
座ってみると
早速ドアを開けてシートに腰を降ろしてみる。
外見から想像するよりも非常にタイトで低い着座位置。
そしてレザーシートからダッシュボード、ウッドパネルまでブラックアウトされたカラーリング、そこに散りばめられた数々のシルバーのアクセント。
メーターパネルはシルバーのリングで縁取られ、ステアリングの中央にシルバー塗装のアクセント、センターコンソールの3連エアダクトからドアサイドの各種スイッチまですべてシルバーで装飾されている。
そう、これはまさしくスポーツカーの内装なのだ。
まるでかつてのシルバーアローか300SLガルウィングにでも乗っているかのような感覚。
メルセデスはすべてのクルマをスポーツカーにしてしまうのだろうか?
とにもかくにも、この所有欲に掻き立てられた高揚感には、恥ずかしながら個人的には完全にノックアウトされてしまった。
乗ってみると
クルマを持つ「悦び」とクルマに乗る「楽しさ」を教えてくれる最高の道標
まずはいつものごとく事前に提供された情報を整理してみよう
・最高出力184ps、最大トルク30.6kgmの多目的型ステーションワゴン
・全長4,730mm×全幅1,810mm×全高1,450mm、車重1,650kg、駆動方式はFR
・搭載する直列4気筒直噴2.0リッターターボは、メルセデスお得意の成層燃焼リーンバーンエンジン
・空気バネと可変ダンパーを電子制御するエアマティックサスペンションを標準装備
「不変」の志と「不偏」な世界感
さあ、それでは乗ってみよう。
直列4気筒直噴2.0リッターターボエンジンは想像とは異なり、以前のような直噴特有のゴロゴロ感は感じない。
ノイズもしっかりと遮音され、心地よいエンジンサウンドだけが耳に入ってくるチューニングが施されている。
早速動き出してみる。
最近のメルセデスの感心事は、ボディタイプや駆動方式が何であろうとどんなクルマでも、4つのタイヤを通じて路面と会話ができることだ。
今やメルセデスの代名詞となるアジリティ(敏捷性)もさることながら、このダイレクト感は初めてそのクルマを運転した者にも大きな安心感を与えてくれる。
それだけでこのクルマに長く乗っていた錯覚さえ起こさせてくれるものだ。
いつもの通り首都高環状線へ合流してみる。
リアがバタつかない...
後ろを振り返らないとステーションワゴンであることもわからない...
どうも今までの先入観か、荷室がカラの状態では決まってステーションワゴンはリアのサスペンションが固くバタつく感覚が強い。
それと広い室内空間の影響からなのか、少々ボディ剛性が緩く何かと微振動が気になる、
ステーションワゴンにはそんな先入観があったのだ。
しばらく首都高を流していると、この程良い塊まり感とともに何とも言えないしっとりとした軽快感が心地良くなっていった。
どうやらこのクルマは徹底した軽量化が計られているらしい。
アルミニウムの使用比率を前モデルの9%から約50%までに高め、重ね合わせたスチールとアルミニウムを高速でリベットを打ち込んで接合するImpAct接合方式を採用。
ホワイトボディの重量比で75kgも軽量化を達成しているようなのだ。
そこに合わさるのがメルセデス独自のエアマチックサスペンション。
従来は上級クラスのみに採用されてきた空気バネと可変ダンパーを備えた電子制御サスペンションだ。
この何とも言えないしっとりとした軽快感はそのテクノロジーの結晶なのかもしれない。
「最善か無か」、メルセデスが有するこの誰にも媚びない「不変」の志は、このクルマにもしっかりと受け継がれていた。
190EからCクラスへ、いつの時代も世界の自動車メーカーたちがこぞって研究し目標とした小型車のベンチマーク。
そこにまた「不偏」の世界観を貫いてきたメルセデス・ベンツ。
メルセデス・ベンツ日本は2014年の日本市場において過去最高の売り上げを記録したことはしごく当然なことなのかもしれない。
戦略とは戦いを略すもの
ビジネスにおける勝者の戦略とは?
ある人はこう言った。
戦略とは戦いを略すものだ。
戦わずして勝つ論理が真の戦略に他ならない。
戦わずして戦いを制する、
本来のあるべきビジネスの戦略論を、ふとこのC 200 Stationwagon Sportsに見た気がしてならなかった。
首都高5号線に合流する頃には、すでにその「不変」の志と「不偏」の世界観に浸ってしまっていた。
たった30分程度の時間で、これからの人生に素晴らしいヒントをくれたこのC 200 Stationwagon Sportsに、
今夜も乾杯...
測ってみると
- 全長×全幅×全高 4,730mm×1,810mm×1,450mm
- ホイールベース 2,840mm
- 車重 1,650kg
- 駆動方式 後輪駆動
- エンジン 2.0リッターDOHC直列4気筒ターボチャージャー付
- トランスミッション 電子制御7段A/T
- タイヤ F225/45R18、R245/40R18
- 燃費 16.5km/l(JC 08モード走行)
- 価格 654万円※メーカー希望小売価格(税込み)
- 試乗車の年式 2015年式
- 試乗開始時の走行距離 5,783km
- 走行距離 491.8km
- 消費ガソリン49.0l
- 試乗形態:市街地50%/高速50%
- 実燃費 10.27km/l(無鉛ハイオク)