MercedesレポートVol.6
~あのメルセデスに乗ってみた~
メルセデス・ベンツML350 4MATIC AMGスポーツパッケージ
どんなクルマ
究極の最大公約数で育まれたメルセデス思想とその心得
文武両道。
SクラスやEクラスがこの大都会に生きるインテリジェンスを象徴するクルマなのだとすれば、対照的にGクラスは荒野を突き進むオフロード版ダイ・ハードなのかもしれない。
そしてこのMクラスといえば、普段は快適なシティクルーザーとして主を守り、そして週末には格好のレジャービーグルとして家族に喜びを与える。
この文武両道、そして現代のビジネス社会に最も求められるスーパーゼネラリストを地で行くようなクルマ。
それが今回の試乗車、メルセデス・ベンツML350 4MATIC AMGスポーツパッケージなのである。
世界基準から生まれたこのクルマは、一体どんなメルセデス思想とその心得を見せてくれるのだろうか?
眺めてみると
実用性×高品質から生まれた、誰からも愛されるその佇まい
いつものごとくスタイリングを見てみよう。
一目見ると普通のクルマよりだいぶ高い車高が際立っている以外は、いつも通りのメルセデスデザインを踏襲。
このフロントフェイスはSUVにもごく自然に溶け込んでいて格好良い。
そしてサイドのキャラクターラインがしっかりとその存在を主張している。
そこからエッジの効いたCピラーと浮かび上がるような美しいプレスラインを纏っている。
従来のメルセデスのイメージとは一線を画すこのハイクオリティ感は率直に素晴らしい。
近年のメルセデスデザインの充実ぶりはここにも現れている。
座ってみると
いつもと変わらない感覚に合わさるいつもと違う風景
いつもの分厚いドアを開けると、いつものメルセデスとは異なり綺麗なシルバーで塗装されたステップの存在に気づく。
そのステップに右足を収め、ゆっくりと乗り込んでみる。シートに腰をかけると、毎度のことながらその少しだけ長い座面長にホッとする。
そしてそのレザーシート。
乗車前のイメージとは少し異なり、このクルマの漆黒のレザーシートは丁寧なステッチワークとともに寸分狂いなくピンと張り巡らされていた。
この思いのほか固めで疲れを予感させない着座感のレザーシートは、まるで高級なウィルクハーンのカンファレンスシートのよう。
長時間のカンファレンスにおいて、大敵である腰痛から根本的に救ってくれるウィルクハーンのカンファレンスシート。
このレザーシートは生まれを同じくするこのドイツの高級カンファレンスシートのごとく、末永く オーナーを守り続けていくに違いない。
乗ってみると
まずはいつものごとく事前に提供された情報を整理してみよう。
・全長4,845mm、全幅1,950mm、全高1,795mm、車重2,200kg、駆動方式は4WD
・最先端の直噴システムを採用した3.5リッターBlueDIRECTエンジンは最高出力225kw、最大トルク370N・mを出力
・フロントをダブルウィッシュボーン式、リアは4リンク式サスペンションを持つDIRECT CONTROLサスペンションは、コイルスプリングとダンパーを分けて前後方向に配置、また走行状況に応じてオイル流量を変化させるセレクティブダンピングシステムを採用。路面状況に関わらず、安心感の高い操縦安定性と優れた快適性を発揮。
・4MATIC専用に最適化した4ESP®(4エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)は、走行状況に応じて四輪の駆動力を適正に配分。ドライバーがコントロールしきれなくなる前の極めて早い段階で必要に応じて各輪に自動的にブレーキをかけて駆動力を回復させ、安定した走行姿勢への回復を図る。
まさにクルマ社会のスーパーゼネラリスト
エンジンに火を入れてみよう。
クルマが動き出すと、まずは少し新鮮な風景が拡がる。
いつもより少し高い着座位置はこんなにも風景を変えてしまうものなのだ。
と思いながら少しアクセルを踏んでみる。
そこにはなんとも気持ち良く、そして安心感のあるソフトな乗り心地が待っていた。
ちょっとした道路の段差も、ガツンと響くことは一切なく、まるで段差を丸め込んで絡み取っていくように乗り越えて行く。
でもそれは決して不快なものでもなく不安なものでもない。
4つのタイヤがどこに接地してどこをトレースしていくのか、やはりいつものメルセデス同様、それがしっかりと伝わって来る感覚はこのクルマにも備わっていた。
そのまま首都高へ合流する。
2,200㎏の体躯を引っ張る3.5リッターガソリン直噴エンジンは、過給器の力を借りることなく225kwを発生。
加速時も淀むことなく行儀よく回転数を刻んでいく。
差し掛かったカーブも柔らかくしっかりとトレース、全然タイヤががんばることがないため不快なロールやアンダーもない。
これがなんとも言えない快感なのだ。
夏休みともなれば首都高は平日でも渋滞は避けられない。
路面温度は40度をゆうに超え、周りのクルマたちも少々夏バテ気味に見えてくるものだ。
そんな渋滞の首都高でも、このクルマは完璧に仕事をこなしていく。
ブレーキはだだをこねることなく忠実に踏力に反応、踏んだ分だけしっかり止まるよう躾けられている。
しかし忘れてはならないことはこのクルマがSUVであるということだ。
縦横高さの室内空間はセダンではありえない余裕を見せる。
高い着座位置は渋滞のストレスを大幅に軽減させ、後席足元にはこぶし二つ分のスペース。
トランクも通常で690リッター、後席可倒で最大2,010リッターを誇る。
SUVでは厳しいと言われていた燃費も3.5リッター/225kwにして高い環境性能とともにリッター10.4kmを達成、Cd値(空気抵抗係数)も0.32を実現している。
そしてそれにもまして、このクルマはこの都会のコンクリートジャングルでは、まさしくフォーマルカーとしても十分成り立つ。
やはりこのクルマこそが、クルマ社会におけるスーパーゼネラリストなのである。
これからの社会を担うアクティブエリートたちに贈るホンモノの魅力
夏休みの首都高の渋滞はいつもとは少し様相が異なり、若者のグループや家族連れを目にすることが多い。
みな一様に楽しげに会話が弾んでいるようだ。
あるクルマはキャンプにでも行くのだろうか、荷物をたくさん積んでいる。
まるで人間がその荷物の隙間に挟まっているかのよう。
そしてあるクルマは子供たちがひしめくように連なり、窓を全開にして我先にと風を探している。
このサウナ状態であれだけの熱風を浴び続けるあの元気さは、まさに正気の沙汰ではない。
いずれにしてもみな思い思いの人生を楽しんでいるに違いない。
そんな彼らのようなアクティブエリートたちが、
「本物」を学ぶために必要なこと、それは「ホンモノ」を知ること。
パリで本物の画家が育つ理由は、何もそこに特別な筆が売っているわけではない。
そこにルーブル美術館が存在するからである。
「本物」の画家は「ホンモノ」を見て育って行くものなのだ。
長年続いたデフレ経済からの脱却を期するこの国も、同様に特別な筆などは存在しない。
あるのは本物から学んでいくこと。
そしてそこからホンモノを知って行くこと。
そんな彼らアクティブエリートのために、このクルマは本物の存在であってほしい。
そしてそこから本当のホンモノを知らしめてほしい。
この国の未来に向けて大切な使命を持つべきこのクルマに、
今夜も乾杯...
測ってみると